医学部 医学科
実習レポート2022 5年次の臨床実習
指導教員レポート:国際医療福祉大学成田病院 循環器内科部長 河村 朗夫
■ 臨床実習を通して、学生に期待すること、理解して欲しいこと。
臨床実習では、貪欲に学んで欲しいと思います。「あれやらせてください。これやらせてください。」と図々しいくらいの方がいいですね。また、本学の学生には伸びる学生の伸びしろがとても大きいように思います。外国人患者さんの診療の際にも、特に臆することなく、対応していました。
■ 受験生に向けてひとことお願いします。
医師は「楽して儲かる仕事」と評しているのを聞いたことがあります。しかし、勘違いしないでください。リモートワークはできません。労働時間も長く、いまだにブラック企業的な要素もあります。新型コロナのワクチンがまだ無く、未知の伝染病として恐れられていたときにも、わが身の危険を顧みず、常に最前線に立つことを当然のことのように要求されてきました。また、訴訟のリスクもあります。患者さんに逆恨みされる事件も聞きます。収入の面だけを見ればもっと割のよい職業は他に沢山あるでしょう。
今の私は、これまで経験し培った医術を次の世代にバトンタッチしている最中ですが、後輩が成長するのを見るのは何にも代えられない喜びです。先日、私が研修医のときに治療をした患者さんからお電話をいただきました。当時私は治癒率25%と申し上げたようですが、治癒され、あれから30年近く経った今もお元気でした。お孫さんもおられるそうです。人の生死のドラマに立ち合い、ときには心からの「ありがとうございました」という感謝のお言葉をいただける仕事はそう多くないように思います。
医師という職業に本当にやりがいがあると感じる人にこそ、医学部受験をお勧めします。
学生レポート:齋藤 千颯
■ 臨床実習中の1日の流れ(起床~就寝まで)を教えてください。
実習中は6:30に起床し、8:15頃には病院に到着します。その後、担当患者さんのカルテを確認し、朝回診に参加します。内科系実習では主に外来やレクチャー、外科系実習では手術の見学を行います。夕方にはカンファレンスに参加、17:00頃に実習が終了します。帰宅後は、レポートの作成や趣味の自炊、USMLEや英語の勉強をしていました。
■ 実習では、どのような狙いや目標を掲げて、どのような取り組みをしましたか?
大学での講義やUSMLEを通して得た知識を臨床の場面を通じて、より深く、使える知識にアップデートするように意識しました。また、よりスムーズで正確な問診・身体診察ができるよう、先生方の話の進め方や所作など、自分自身に取り入れられることがないかを常に意識しています。
また、実習と並行して在学中のUSMLE Step1, 2 の取得を目標とし、5年次では目標の半分となるStep 1 の合格まで達成することができました。
■ これまでの学修の成果が発揮できたと実感した場面はありましたか?
講義や他の実習科で学修した疾患の患者さんを担当した際には、知識に基づいて問診・診察を行うことで、疾患に関連する問題点を発見し、治療方針の決定に繋げることができました。
大学の講義で学ぶ症例はひとつの疾患で症状の全てが説明できることが多いですが、実際の患者さんではそのようなことはむしろ少ないと思いました。様々な疾患が同時に存在しており、また経過中に新たなプロブレムが出現するなど、実臨床は非常に複雑なものだと実感しました。
■ 実習のなかで印象に残っているエピソードを教えてください。
実習では指導医との情報共有やプレゼンテーションなど自分の考えを発表する場面が多くあります。しかし、情報を過不足なく正確に伝えることは簡単ではありません。聞き手のニーズを想定した取捨選択を意識し、より良い情報伝達をめざしています。成田病院では医師以外の職種の方からも指導やレクチャーを受ける機会が多く、医師以外の視点からの医療の提供を意識する場面が多々あります。多職種連携教育を重視する本学の特長が表れているものと思います。
■ 臨床実習期間中に自分がいちばん「成長した」「自信が持てた」ことは何ですか?
担当患者さんの経過に関して自分が考えた病態と指導医の先生の解説とが一致していたときに自分自身の臨床推論力の成長を感じました。今はまだ典型的な疾患・症例に関してですが、この経験を積み重ねてより複雑な症例についてもロジカルな推論を立てられる力をつけていきたいです。
■ 今後の夢や目標について教えてください。
本学での生活を通じて鍛えられた英語力や国際観を生かし、国内外からの患者さんの診療だけではなく、実際に海外の臨床現場でも活躍できる医師になりたいと思います。そして、患者さんに満足していただける医療を提供するとともに、将来的には後進の育成などにも携わりたいと思います。
学生レポート:荒谷 玄
■ 臨床実習では、どのような狙いや目標を掲げて、どのような取り組みをしましたか?
臨床実習では、大学で学んだ知識を少しずつ実臨床で使えるものに変えていくことを目標としました。そのため、朝や夕方のカンファレンスに積極的に参加し、各学会のガイドラインを活用した勉強を心掛けました。ガイドラインは大学の試験を乗り切るためには細かすぎることもありますが、実際の患者さんの診断基準や治療方針を考える上では非常に役に立ちました。また、大学の講義と大きく異なる点は各科で病歴要約を作成することです。患者さんの情報をまとめていく上で、同じ病気でも訴えは千差万別で、教科書のようにはいかないことを痛感しました。
■ 実習のなかで印象に残っているエピソードを教えてください。
多様なシミュレーションを行ったことが印象に残っています。特に感動したのはロボット手術で非常に有名なda Vinciを実際に触らせていただいたことです。それ以外にも消化管内視鏡や腹腔鏡を始めとして、各科で特徴的なシミュレータを使った実習ができました。
その一方で、手術の日は大変でした。清潔野を保ったまま数時間、時には10時間に及ぶ手術に参加することは体力面でも気力面でも大変な苦労でした。低学年の頃は、医師は頭の良さで勝負する仕事だと思いこんでいましたが、いざ臨床で指導医の先生方に教わり、優れた医師は体力や人間関係構築にも秀でていることを認識しました。
■ 臨床実習期間中に自分がいちばん「成長した」「自信が持てた」ことは何ですか?
平凡ですが、毎日欠かさずに実習に参加し、社会人として当たり前の礼儀をもってスタッフや患者さんに接することです。私は成績でも手先の器用さでも同期の学生には敵いませんが、人間関係を良好に築くことにおいては自信を持っています。
また、上述の病歴要約を作成する点では明らかに成長したと感じます。4年生で最初に回った診療科では、病歴要約が終わらずに徹夜しかけたこともありましたが、現在は実習の合間の時間を縫って完成させることができるようになりました。
■ 今後の夢や目標について教えてください。
実はまだ将来進みたい診療科が決まっていません。当面の目標は国家試験合格と診療科決定ですが、将来は自分の専門分野でガイドライン作成に携われるようになりたいと考えています。診療ガイドラインは誰でもアクセスすることができ、医学生や若い医師が診療の基盤として手に取るため、非常に社会的意義の大きい出版物だと考えているのがその理由です。
学生レポート:河口 奈々桜
■ 実習では、どのような狙いや目標を掲げて、どのような取り組みをしましたか?
担当の患者さんにしっかり向き合うことを目標に掲げて実習をしています。主に1人の患者さんを担当するので、病気や生活について時間をかけてじっくりお話を伺うように取り組んでいます。日々お話を伺い、ラポールを築いていく中で、患者さんの不安や病気に対する本音を知ることができた時に、信頼関係を築くことの大切さを痛感しました。
■ 実習のなかで印象に残っているエピソードを教えてください。
同年代の難病を患う患者さんを2週間担当させて頂きました。担当時には体を動かすことや声を出すこともできませんでしたが、そのような中、身体診察に毎日ご協力くださいました。数ヶ月後、治療が効果を示し、担当の先生からその患者さんの様子を動画で見せて頂いた時にはとても嬉しく、特に印象に残っています。
■ 臨床実習期間中に自分がいちばん「成長した」「自信が持てた」ことは何ですか?
外来実習では先生の診察の前に、初診の患者さんの予診を学生ひとりでさせて頂くことがあります。教科書上で学んだ疾患について鑑別をしながら、初めてお会いする患者さんの予診を行うことはとても緊張します。話を伺う中で、学んだ知識を生かし、重要な所見について知ることができたときに、実習前に比べて成長したと感じることができました。
■ 今後の夢や目標について教えてください。
患者さんは病気や治療について様々な不安を抱えていらっしゃると思います。その話を真摯に聞き、患者さんからこの医師になら不安なことや本音を話せる、と思ってもらえる医師になりたいです。