成田キャンパス
医学科

医学科

FACULTY OF MEDICINE

医学部 医学科

実習レポート2021

指導教員:国際医療福祉大学市川病院 脳神経内科学 教授 荻野 美恵子(右)

指導教員レポート:国際医療福祉大学市川病院 脳神経内科学 教授 荻野 美恵子

■臨床実習を通して、学生に期待すること、理解してほしいこと。

真の患者さんを担当することで、病歴聴取、身体診察はもちろんのこと、ラポールを築くことなど座学では得られない学びを得てください。実際の患者さんは高齢者が多く、模擬症例と異なり同時に多問題が生じていることがほとんどです。医学的な問題だけでなく、「病(やまい)」になったことに伴い様々な社会的問題も抱えます。私たち医療者は包括的にそれらの問題に対応することを期待されています。単なる知識だけでは不十分で、どこに問題があるのかを見極める洞察力と様々な情報を統合し、優先順位をつけて具体的な治療・ケアを実行する力が必要です。学生のうちから与えられたチャンスに真摯に向き合うことを繰り返すことでその力がついていきます。また、医療チームの一員としてチーム医療を実践することや医師に準じた立場として職業人としての自覚のある行動をとることを期待しています。

■臨床実習を通して、3年間の教育の成果を実感した場面はありましたか。

患者さんのお話を熱心にきき、単に医学的知識で患者さんをみるのではなく、苦悩や生活における疾病の影響などを含めた全人的医療の視点で考察ができていたときには、繰り返し医療プロフェッショナリズムのコースを通して教育してきたことが少しは良い影響を与えているのではないかと実感します。また、そのような学生について患者さんからお褒めの言葉を頂くとわが子のようにうれしくなります。医療面接や身体診察の基本的な実施ができていた時にも教育の成果を実感しました。

■他大学の実習生と比較して、本学の学生ならではと感じたことはありましたか。

本学は低学年からアクティブラーニングを実践しており、ディスカッションを頻繁に行っているせいか、コミュニケーション能力の高い学生が多いですが、実際の医療現場でも積極的に担当した患者さんとのコミュニケーションをとっていると感じます。また、本学は医学部には珍しく社会福祉的な授業も多いですが、生活に根差した退院後のプランを提案したりするところをみると、多職種連携教育で学んだICFの考え方が生かされていると感じます。

■英語で医療を学んだことが生かされていると実感した場面はありましたか。

臨床場面では学生を相手に説明する際に、様々な英語での医学用語が用いられますが、違和感なく理解できているように思いました。また、学生ながら英語の論文を参考文献として担当症例を考察している場面もあり、当たり前のように英語を用いて医療知識を習得している学生もいます。金曜日に栃木・九州・東京と各地にいる学生がzoomで参加する合同カンファレンスも2回に1回は英語で行っていますが、質疑を含め英語でのカンファレンスができており、貴重な学びの時間となっているようです。今後アフターコロナの時代になれば、実際の臨床現場の対面診療として語学力がさらに求められるようになりますが、その時も楽しみです。

■受験生に向けてひとこと。

低学年から医療面接・身体診察、医療プロフェッショナリズムなど実践的な学習をつんだうえで、長期の参加型臨床実習を様々な地域(成田・三田・市川・熱海・栃木・九州・海外)や医療形態(都市型・地域密着型、急性期・回復期・慢性期)で参加できることは、貴重な経験となり、単なる座学以上に知識の定着に寄与すると思います。

学生レポート:八塩 知樹

学生:八塩 知樹(左)、指導教員:国際医療福祉大学市川病院 脳神経内科学 教授 荻野 美恵子(右)

■臨床実習の「一日の流れ」は?

私は自宅から通ったため朝6時前に起床し、2時間弱をかけて病院に向かいました。病院には集合時間の8時40分の30分前くらいに入り患者さんのカルテを確認します。手術がある日は午前中に手術見学し、午後はクルズス(レクチャー)や手術に関する説明がありました。手術のない日は回診を見学した後、担当患者さんの診察をしたり、外来やクルズス、手技の見学などを行います。20時ごろ帰宅し症例サマリーの作成や次の日の予習などをしたのちに就寝となります。

■3年間の学修の成果を特に実感した場面はありましたか?

担当患者さんとお話する時に特に実感します。知識の学修により症状の原因を考えたることもありますが、患者さんに向き合う姿勢や態度など教科書は教えてくれない面が医療プロフェッショナリズムなどの授業を通して身についていたのだと実感することがあります。まだまだ医療者として半人前ですが、学生だからこそ多くの時間を患者さんとの対話に充てることができますし、学生だから聴取できる病歴もあるはずと思いお話をさせていただいています。

■器官別統合授業の成果を感じた場面はありましたか?

基本が大切ということはどの分野でも通じることだと思いますが改めて実習にでて痛感しています。臨床実習では学ぶ様々なことの根幹には器官別統合授業で学習した病態生理が元になっていることが多く大変理解の助けになりました。 "暗記するのではなく症状、病態を理解するようにしなくてはいけない"という先生からの言葉は本当にその通りだと感じることが多いです。

■大学で学修したことと現場での違いを感じた点はありますか?

「医学」と「医療」の違いを感じることが多いです。例えば、検査の数値からは尿路感染症を疑う病態であっても患者さんの状態や耐性菌の存在などを考慮しどの抗菌薬を投与するべきかを決めます。テストの問題を解くような短絡的な考え方は現場では通用しないと感じました。病院では患者さんや家族、病院スタッフの方々など多くの方のことを考えます。紙の上で問題を解く能力ももちろん大切ですが、同じように実際に活かすことのできる考え方も大切だと学びました。

■患者さんと接して印象に残っていることはありますか?

患者さんにとって、実習生から何度も同じことを聞かれることは負担になっているはずなのに、「ありがとう」と言っていただき、できる限りを尽くしたいという気持ちになりました。

■他職種とのコミュニケーションについて印象に残っていることはありますか?

看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など様々な職種の方が介入している場面で、会話の中で患者さんが医師や実習生に見せる表情とは違うものを見せることがありました。その表情や訴えが共有されている科では患者さんが前向きな発言をされることが多いように感じました。

■臨床実習期間中に自分が「成長した」と感じたことはありますか?

臨床実習が始まった当初は分からないことややらなくてはいけないことを肌で痛いほど感じ、無力感のようなものを感じました。しかし、実習と向き合う中で徐々に"ちょっとでも自分の力にできるようにしよう"と考えるようになりました。医学全体として身につけなければならない知識は多くありますが、「千里の道も一歩から」と考えられるようになったのは成長なのかなと感じています。

■臨床実習を指導する先生について。キャンパスと医療現場で印象に変化はありましたか?

先生方が医療現場で医師として働く姿をみて、授業で伝えたかったことがどのようなことだったのかより感じることができるようになりました。印象の変化というよりもキャンパスで先生が伝えようとしていることをもっとキャッチできるようになろうと自分が変わったように感じます。

■臨床実習を通して現時点で自分の進む診療科は決まりましたか?

臨床実習を通じてそれぞれの科の特徴や魅力、やりがいを理解してから決めたいと考えています。自分にとって進路を考える時間ができたことは良かったと感じています。

■実習中の環境(病院の立地、実習中の住環境、生活の状況など)について

市川病院は北総線の矢切駅から徒歩5分と駅から近い場所に立地します。大学のある公津の杜と東京の中間といったイメージです。公津の杜から通う学生や都内や市川、船橋などの自宅などから通学する学生など多岐にわたります。私の場合は自宅から通うことができ、ストレスや家事負担が少なく、学習に集中できる環境にありました。