成田キャンパス

医学部

DEPARTMENT OF MEDICINE

教員紹介

教授 宮下 和季

  • 専門分野

    内分泌代謝学、糖尿病学、高血圧学、抗加齢医学、臨床内科学、代謝学の観点から筋肉・腎臓・血管・腸管の臓器機能を解析し、内分泌学の観点から心血管病・加齢性疾患・糖尿病・高血圧の新規治療法開発に取り組んできた。

  • 研究テーマ
    • 骨格筋ミトコンドリア活性化によるサルコペニア(加齢性の筋量減少と筋力低下)治療の開発
    • 臓器ミトコンドリア代謝の可視化に基づく糖尿病合併症の病態解明と新規治療法の開発
    • 心血管ホルモンによる臓器代謝制御の解析と治療応用
    • 機械学習による内分泌疾患の予後予測
  • 研究実績

    【researchmap】
    https://researchmap.jp/read0069878

    ORCID ID: 0000-0003-3757-4334, URL: https://orcid.org/0000-0003-3757-4334

    【代表論文とその解説】 (筆頭著者, 責任著者, 最終著者のいずれかから抜粋) * 責任著者
    1. Ryuzaki M, Miyashita K*, Sato M, Uto A, Endo S, Oshida T, Kinouchi K, Mitsuishi M, Meguro S, Itoh H.
      Activation of the intestinal tissue renin-angiotensin system by transient sodium loading in salt sensitive rats.
      J Hypertens. 40:33-45,2022.
       本研究では、高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、塩分ならびに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の一過性投与が、高血圧発症に与える影響を検討した。SHRへのARBの投与で、腸管からのNa吸収が低下し血圧が低下することを見出した。その作用は、腸管レニン-アンジオテンシン系(RAS)の阻害によるものと示唆され、これまで注目されていなかった腸管RASの塩分吸収, 体液量制御と、血圧調節における意義を明らかにした。
    2. Uto A, Miyashita K*, Endo S, Sato M, Ryuzaki M, Kinouchi K, Mitsuishi M, Meguro S, Itoh H.
      Transient Dexamethasone Loading Induces Prolonged Hyperglycemia in Male Mice with Histone Acetylation in Dpp-4 Promoter.
      Endocrinology. 162:bqab193,2021.
       代表的な副腎ステロイドであるデキサメサゾンは炎症性疾患の治療に有用である一方、ステロイド糖尿病の原因にもなる。ステロイド糖尿病患者で血糖コントロールの推移を検討したところ、ステロイド投与終了後も血糖は投与前のレベルに復さず、高血糖が持続することを見出した。その機序を、デキサメサゾン投与マウスを用いて検討し、腸管Dpp-4遺伝子プロモーター領域のヒストンアセチル化がデキサメサゾン投与により亢進し、そのアセチル化の亢進が投与終了後も遷延することが、長期にわたる血糖上昇に関与する可能性を見出した
    3. Fujii K, Kubo A, Miyashita K*, Sato M, Hagiwara A, Inoue H, Ryuzaki M, Tamaki, M, Hishiki T, Hayakawa N, Kabe Y, Itoh H, Suematsu M.
      Xanthine oxidase inhibitor ameliorates postischemic renal injury in mice by promoting resynthesis of adenine nucleotides.
      JCI Insight. 4(22):e124816,2019.
       本研究では、質量分析イメージングとメタボロームを駆使して、分子量が小さくこれまでの研究手法では可視化が困難であった、臓器内の代謝産物を半定量的に可視化する手法を開発した。マウス腎臓の虚血に伴うATP分解の経時的変化を可視化することに成功し、この手法を用いて、ATPから尿酸への分解を抑えるキサンチンオキシダーゼ阻害薬であるフェブキソスタットが、虚血再灌流後の腎皮質ATP再合成を促進して、虚血に伴う腎障害の進行を抑えることを明らかにした。
    4. Itoh H, Hayashi K, Miyashita K.
      Pre-emptive medicine for hypertension and its prospects.
      Hypertens Res. 42:301-305,2019. (review)
       この総説では、患者ひとりひとりに個別化した予防医療のあり方である先制医療の観点から、新しい高血圧診療に向けたアプローチを提案した。デジタルデバイスを活用して従来把握困難であった患者の日常生活情報をモニタリングし、得られたビッグデータを数理工学的に解析することで、患者の特性にあわせた先制医療が実現すると提案した。その一部は、「概日リズムと食行動・居住環境モニタリング研究」として、外来通院患者の歩数等の生活情報をウエアラブルデバイスで取得する臨床研究へと結実した。
    5. Fujii C, Miyashita K*, Mitsuishi M, Sato M, Fujii K, Inoue H, Hagiwara A, Endo S, Uto A, Ryuzaki M, Nakajima M, Tanaka T, Tamaki M, Muraki A, Kawai T, Itoh H.
      Treatment of sarcopenia and glucose intolerance through mitochondrial activation by 5-aminolevulinic acid.
      Sci Rep. 7:4013,2017.
       糖尿病患者で顕著に進行し生活の質に大きな影響を与える、加齢に伴う筋肉量の低下(サルコペニア)の改善を目指して、ミトコンドリア電子伝達系の働きに必須の天然アミノ酸である、アミノレブリン酸の効果を検討した。マウスへのアミノレブリン酸投与で、骨格筋のミトコンドリアが活性化し、握力・持久力が改善して筋肉量が増えることを見出した。その成果を踏まえた臨床研究がAMED研究事業に採択され、「外来通院中の糖尿病患者へのアミノレブリン酸投与による、サルコペニア治療の開発を目指した研究」が実施された。
    6. Tamaki M, Hagiwara A, Miyashita K*, Wakino S, Inoue H, Fujii K, Fujii C, Sato M, Mitsuishi M, Muraki A, Hayashi K, Doi T, Itoh H.
      Improvement of physical decline through combined effects of muscle enhancement and mitochondrial activation by a gastric hormone ghrelin in male 5/6Nx CKD model mice.
      Endocrinology. 156:3638-48,2015.
       加齢に伴うミトコンドリア機能不全の原因となる、PGC1-α遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化が、腸管から分泌される食欲亢進ホルモングレリンの投与で減少することを見出した。筋肉増強作用が知られているホルモンであるIGF-1の投与では、骨格筋ミトコンドリアの活性化が不十分であったのに対し、グレリンの投与ではPGC1-α遺伝子の脱メチル化を介したミトコンドリア活性化を認めたことから、サルコペニア治療における腸管ホルモングレリンの有用性が示唆された。
    7. Tamaki M, Miyashita K*, Wakino S, Mitsuishi M, Hayashi K, Itoh H.
      Chronic kidney disease reduces muscle mitochondria and exercise endurance and its exacerbation by dietary protein through inactivation of pyruvate dehydrogenase.
      Kidney Int. 85:1330-9,2014.
       腎不全患者ではサルコペニアの進行が顕著であるが、その詳細なメカニズムは不明であった。本研究では5/6腎摘による慢性腎不全モデルマウスを用いて、腎不全に伴うサルコペニアの進展を検討した。本研究の腎不全モデルでは、発症早期から炎症性サイトカインが増加して骨格筋のミトコンドリア機能不全が生じること、また、サルコペニアを改善する高蛋白食が、腎不全に伴う骨格筋ミトコンドリア機能不全には良い影響を及ばさないことを見出し、腎不全におけるサルコペニア病態の理解を深めた
    8. Muraki A, Miyashita K*, Mitsuishi M, Tamaki M, Tanaka K, Itoh H.
      Coenzyme Q10 reverses mitochondrial dysfunction in atorvastatin-treated mice and increases exercise endurance.
      J Appl Physiol. 113:479-86,2012.
       糖尿病ないしは加齢・腎不全などに伴うサルコペニアが、骨格筋ミトコンドリアの活性化により治療可能との仮説のもと、代表的なミトコンドリア電子キャリアであるコエンザイムQ10のサルコペニア改善作用を検討した。筋ジストロフィーモデルマウスやスタチン投与マウスへのコエンザイムQ10投与により、骨格筋ミトコンドリア機能と持久力が改善したことから、サルコペニア治療におけるコエンザイムQ10の有用性が示唆された。
    9. Mitsuishi M, Miyashita K*, Muraki A, Itoh H.
      Angiotensin II reduces mitochondrial content in skeletal muscle and affects glycemic control.
      Diabetes. 58:710-7,2009.
       アンジオテンシンII(AngII)を代表とする心血管系に作用する循環調節ホルモンの、心血管系以外の臓器における作用は十分検討されていなかった。AngIIが耐糖能に悪影響を及ぼすとの報告に基づき、本研究では、AngIIがミトコンドリアに作用して耐糖能を悪化させるとの仮説を検証した。マウスへの浸透圧ポンプを用いたAngII持続投与により、骨格筋のミトコンドリアが減少して耐糖能が悪化しており、その作用が1型AngII受容体を介していることを見出した。
    10. Miyashita K, Itoh H, Tsujimoto H, Tamura N, Fukunaga Y, Sone M, Yamahara K, Taura D, Inuzuka M, Sonoyama T, Nakao K.
      Natriuretic peptides/cGMP/cGMP-dependent protein kinase cascades promote muscle mitochondrial biogenesis and prevent obesity.
      Diabetes. 58:2880-92,2009.
       ナトリウム利尿ペプチド(NP)は心血管系から分泌される降圧ホルモンで、心不全治療薬として臨床応用されているが、AngII同様、心血管系以外での作用は不明であった。本研究では、BNP過剰発現マウスとcGMP依存性蛋白キナーゼ(cGK)過剰発現マウスを用いた検討により、NPとNP下流の細胞内シグナル分子であるcGKのカスケードが、骨格筋や褐色脂肪組織のミトコンドリアを活性化して、脂肪燃焼を促進し体重と血糖値の上昇を抑制することを見出した。NPが糖尿病と心血管病の両方に治療効果を発揮する可能性を示したことで、本報告は大変注目されている。
    11. Miyashita K, Itoh H, Arai H, Suganami T, Sawada N, Fukunaga Y, Sone M, Yamahara K, Yurugi-Kobayashi T, Park K, Oyamada N, Sawada N, Taura D, Tsujimoto H, Chao TH, Tamura N, Mukoyama M, Nakao K.
      The neuroprotective and vasculo-neuro-regenerative roles of adrenomedullin in ischemic brain and its therapeutic potential.
      Endocrinology. 147:1642-53,2006.
      心筋梗塞や脳梗塞による臓器機能の低下が、血管新生作用を有するホルモンによる血管再生療法で改善する可能性が示され、数々の液性因子の虚血性疾患への治療応用が検討されている。本研究では、血管拡張ホルモンであるアドレノメデュリン(AM)の過剰発現マウスを自ら作成して、AMの治療応用に向けた基礎研究を推進した。中大脳動脈閉塞(MCAO)脳梗塞モデルを用いた検討で、AM過剰発現マウスでは野生型と比較して、脳梗塞後の血管-神経再生が促進しロータロッドで評価した運動機能が改善することを見出し、AMの脳梗塞への治療応用の可能性を提唱した。
    12. Miyashita K, Itoh H, Sawada N, Fukunaga Y, Sone M, Yamahara K, Yurugi-Kobayashi T, Park K, Nakao K.
      Adrenomedullin provokes endothelial Akt activation and promotes vascular regeneration both in vitro and in vivo.
      FEBS Lett. 544:86-92,2003.
       2001年に大学院生として基礎研究を開始し、様々な液性因子の血管新生作用を検討した。本研究では、ゲルプラグ埋込マウスを用いた斬新な手法により、日本で発見された褐色細胞腫由来の血管拡張ホルモンであるアドレノメデュリンが、血管新生を強力に促進することを見出した。この知見を踏まえ、心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患へのアドレノメデュリンの臨床応用を目指した試みが世界で展開されており、日本では宮崎大学や国立循環器病研究センターを中心に、治療薬としての開発が縷々として進められている。
  • 学位・学歴
    • 1998年 京都大学医学部卒業
    • 2006年 京都大学 博士(医学)取得
    • ・アドレノメデュリンの虚血脳における神経保護作用ならびに血管-神経再生作用とその治療応用に関する研究
  • 職歴・学会
    • 1998年 京都大学医学部附属病院 (内科研修医)
    • 1999年 静岡市立静岡病院 (内分泌・代謝内科医員)
    • 2006年 日本学術振興会 (特別研究員 - PD)
    • 2007年 慶應義塾大学医学部 特別研究助教 (腎臓内分泌代謝内科)
    • 2009年 University of California San Francisco (Visiting assistant professor)
    • 2010年 慶應義塾大学医学部 特任講師 (腎臓内分泌代謝内科)
    • 2016年 慶應義塾大学医学部 専任講師 (腎臓内分泌代謝内科)
    • 2017年 慶應義塾大学医学部 特任准教授 (腎臓内分泌代謝内科)
    • 2022年 国際医療福祉大学医学部 教授 - 現在に至る

    • 【資格】
    • 総合内科専門医・研修指導医、内分泌専門医・研修指導医、糖尿病専門医、高血圧専門医

    • 【学会】
    • 2013年 日本内分泌学会 関東甲信越支部 事務局長
    • 2014年 日本内分泌学会 若手・中堅の会(YEC) 世話人
    • 2014年 日本高血圧学会 若手ワーキンググループ委員
    • 2016年 日本高血圧学会 国際交流委員
    • 2016年 日本内分泌学会 若手・中堅の会 世話人代表
    • 2018年 日本高血圧学会 みらい計画実行委員
    • 2019年 JSH2019日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン 査読委員
    • 2020年 日本高血圧学会 広報副委員長
    • 2022年 国際高血圧学会 ISH2022 事務局長
  • メッセージ
    医学と、医学を取り巻く科学技術, 医療制度, 社会構造は、弛まない進歩と変化を日々続けるが、それらが患者にどのようなメリットをもたらすかを決める最後の一手は、患者の目前にある医療従事者に委ねられるところが大きい。基礎医学から臨床医学、京都から東京へと、多彩で一筋縄ではいかない、内分泌学の研究・臨床・教育の経験を積んできたが、大学教員としては、個々の事象に宿る様々な考え方を学生と共有し、その中に灯る、医療従事者の良心を伝えていく所存である。