成田キャンパス

医学部

DEPARTMENT OF MEDICINE

教員紹介

伊藤 鉄英

教授 伊藤 鉄英

  • 研究実績

    【英文業績】
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=Tetsuhide+ITO&sort=date

     

    現在まで膵臓病学を中心とした基礎および臨床研究を行ってきました。主に慢性膵炎、急性膵炎、自己免疫性膵炎(IgG4関連疾患)、膵性糖尿病、膵癌、消化管ホルモン、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)、神経内分泌腫瘍などに関する基礎および臨床研究です。  まず、膵炎関連について記載します。慢性膵炎は進行すると膵外分泌機能不全(消化吸収不全)および膵性糖尿病になり、膵癌発症リスクの最も高い疾患です。それゆえ、慢性膵炎の早期診断、線維化進展機序の解明、早期治療介入の研究が重要です。まず、私は新しい慢性膵炎動物モデルの作製に成功し、慢性膵炎線維化進展の初期には単球をリクルートするケモカインのMCP-1の関与についてGutに報告しました。また膵線維化に重要な役目を担う膵星細胞を日本でいち早く単離・培養に成功しその増殖機序および制御について多くの新しい知見を世界に発信しました。さらに、それまで非可逆性と定義されていた慢性膵炎が、動物実験で早期治療介入することで可逆性に改善することを報告し、2009年の慢性膵炎臨床診断基準に新たなカテゴリーとして早期慢性膵炎の概念を打ち立てました。また、現在慢性膵炎診療ガイドライン作成委員長を務めています。また、日本で初めて患者さんおよび一般市民用にスマートフォン・iPoneで無料ダウンロードできる慢性膵炎の生活指導アプリ「慢性膵炎の話をしよう」を厚労省の資金で作成し多くの患者さんに利用頂いています。一方、特殊な慢性膵炎と考えられていた、膵管狭窄型膵炎には自己免疫機序が関わっていることが知られていましたが、私は九州大学病院の3症例をもとに自己免疫性膵炎の疾患概念を確立し、ステロイド治療が有効であることを報告しました。その後、自己免疫性膵炎は日本を中心に症例が集積され、IgG4関連疾患として発展しています。さらに、急性膵炎は良性疾患でありながら一旦重症化すると致死的な疾患で現在でも約10%が亡くなれます。重症化進展機序解明および治療に関して現在まで多くの基礎的研究論文を報告してきました。特に急性膵炎における細胞間コミュニケーションに関する研究は膵臓病財団賞を受賞しました。次に、膵腫瘍に関してですが、まず、予後の非常に悪い膵癌は80%以上の方は発見された時は手術ができない状態です。私は 膵癌の早期診断の開発に目を向け、癌特異性が高いII型糖鎖抗原の膵癌腫瘍マーカー有用性を報告しました。さらに、膵癌患者では非活性化型膵エラスターゼ1が血中へ逸脱しているのを発見し早期診断の可能性を報告しました。膵癌治療に関しては、切除不能進行性膵癌に対して免疫細胞療法である骨髄非破壊的同種末梢血造血幹細胞移植(ミニ移植)を日本で先駆けて行い、その安全性と有効性を報告し注目されました。また、現在福岡山王病院は膵神経内分泌腫瘍に関して日本有数のハイボリュームセンターであり、全国から患者さんが集まります。内分泌疾患を契機に膵内分泌腫瘍を伴うMEN1の診断がされること、耐糖能異常より発見されるケースもあります。私は日本で初めて膵消化管神経内分泌腫瘍の全国疫学調査を施行し、日本の実態や欧米との比較を報告し世界から注目され、特にその論文はBest citation awardをJ Gastroenterologyより2回受賞しました。また、新規分子標的薬を中心とした多くの膵消化管神経内分泌腫瘍治療の国際共同試験に参加し、特にNEJMに2論文共同執筆者(原著3rd name、letter 2nd name)としてその成果を報告しています。現在、膵消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドラインの委員長を務めています。さらに、米国NIHのDr Jensenと神経内分泌腫瘍および消化管ホルモンに関する基礎共同研究を行っており、多くの業績を残しています。

  • 学位・学歴

    昭和52年 4月  九州大学医学部医学科入学
    昭和59年 3月  九州大学医学部医学科卒業
    昭和61年 6月  九州大学医学部研究生(内科学第三講座)
    昭和63年 3月  同上 退学

  • 職歴・学会

    昭和52年 4月  九州大学医学部医学科入学
    昭和59年 3月  九州大学医学部医学科卒業
    昭和61年 6月  九州大学医学部研究生(内科学第三講座)
    昭和63年 3月  同上 退学

    【職歴】
    昭和59年12月 九州大学医学部附属病院医員(臨床研修医)(第三内科)
    昭和60年 6月  国立中津病院医員(臨床研修医)(内科)
    昭和63年 4月  九州大学医学部附属病院医員(第三内科)
    平成 元年 6月  国立病院九州がんセンター医師(消化器内科)
    平成 2年 6月  九州大学医学部附属病院医員(第三内科)
    平成 4年 4月  国立別府病院医師(消化器部科)
    平成 5年 4月  九州大学医学部附属病院助手(総合診療部)
    平成 7年 4月  九州大学医学部附属病院助手(第三内科)
    平成 8年12月  米国国立衛生研究所(NIH)研究員(消化器部)
    平成11年 6月  福岡県立嘉穂病院(内科医長)
    平成12年 4月  九州大学大学院医学研究院助手(病態制御内科学分野)
    平成14年 6月  九州大学医学部附属病院第三内科助手に配置換
    平成14年 6月  九州大学大学院医学研究院 講師(病態制御内科学分野)併任
    平成18年 4月  九州大学病院肝臓・膵臓・胆道内科 副科長
    平成22年 2月  九州大学病院肝臓・膵臓・胆道内科 診療准教授
    平成23年 4月  九州大学大学院医学研究院 准教授(病態制御内科学分野)
    平成29年 4月  福岡山王病院 膵臓内科・神経内分泌腫瘍センター センター長
    平成30年 4月 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 教授 併任
    令和2年 4月    国際医療福祉大学 医学部 消化器内科学 教授 併任
    現在に至る

    【学会及び社会における活動等】
    平成13年 1月  日本膵臓学会評議員
    平成15年 1月  日本消化器病学会評議員
    平成19年10月  Associate editor, Clinical Journal of Gastroenterology
               ~平成21年3月まで 
    平成19年10月  日本消化器病学会 WHO ICD11改訂WG委員
    平成22年 4月  日本内科学会九州地方会事務局幹事
               ~平成23年3月まで
    平成23年 3月  Advisory Board of ENETS (欧州神経内分泌腫瘍学会) 理事
               ~平成31年3月まで
    平成23年 4月  Associate editor, Journal of Gastroenterology
               ~平成29年3月まで
    平成25年 3月  日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS) 理事
    平成25年 7月  日本膵臓学会 理事
    令和2年  4月  日本消化器病学会 執行評議員
    令和3年  6月  第117回日本消化器病学会九州支部例会 会長
    令和3年  9月  第9回日本神経内分泌腫瘍学会 会長

  • メッセージ

    国際医療福祉大学の教育理念である「人間中心の大学」、「社会に開かれた大学」、「国際性を目指した大学」という3つの基本理念を中心に、医学に関する知識・技術を基盤にした、医学倫理に徹し、旺盛な探求心を有する医師および医科学研究者の育成を目指しています。以前は、九州大学病態制御内科准教授および病院の肝臓・膵臓・胆道内科の副科長として、医学生、研修医および大学院生の教育をおこなっていました。国際医療福祉大学では特に内分泌腺と外分泌腺の両者を持つユニークな臓器である膵臓病学および神経内分泌腫瘍を中心に教育を行っていきますが、膵臓疾患は内分泌・糖尿病疾患および肝臓・胆道・消化管疾患とオーバーラップするため、それらに関する広範囲で基礎的な医学知識が必要となります。我が国では膵臓病および神経内分泌腫瘍を専門に診療・研究をしている病院は少なく、医学生および大学院生には内分泌・糖尿病・肝臓・胆道を理解させた上での膵臓病学および神経内分泌腫瘍を教授する特色のある講義、基礎的・臨床実習に取り組んでいこうと考えています。
     病棟実習においては内科で必要な基本的な診察の仕方(理学的所見の取り方)、診断(画像および血液データの解釈の仕方)、および治療(薬効、効果判定、副作用に関する知識)に関して指導します。基礎研究では、実験の組立方、基本的手技法、データ結果の解釈の仕方、論文作成の仕方などを指導しており、独自性を持って研究を遂行できるような指導を行います。一方、大学院生に対して世界に発信できる水準の高い膵臓病学に関する基礎的研究を指導し博士号学位を取得するのが目標です。