成田キャンパス

糖尿病・代謝・内分泌内科学教室

教室紹介

当科の大学院生1号 山縣弘規先生の論文がScientific Reports誌に掲載されました。

研究概要

 

背景:
体内には自己免疫性疾患に関わるような自己抗体の他にも生理的役割や病原性不明のポリクローナルな自己抗体が産生されています。今回我々はProprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)に対する血中自己抗体の臨床意義に関する研究を行いました。PCSK9は家族性高コレステロール血症の第3番目の原因遺伝子として同定され、機能獲得型変異は高コレステロール血症を生じます(Nat. Genet. 34, 154-156 2003)。
一方、近年、PCSK9は糖代謝とも関連することが報告されています。PCSK9のノックアウトマウスでは膵β細胞におけるLDL受容体の発現が亢進し、細胞内コレステロール濃度の上昇に伴ってインスリン分泌が低下します(Eur. Heart. J. 40, 357-368. 2019)。

研究結果:
健常者110名、糖尿病患者274名で、血液中のPCSK9タンパク、抗PCSK9抗体をamplified luminescence proximity homogeneous assay-linked immunosorbent assay (AlphaLIS法)で測定しました。その結果、PCSK9タンパク、抗PCSK9抗体は健常者に比し、糖尿病患者で有意に高値でした。さらにPCSK9タンパク、抗PCSK9抗体測定後、糖尿病患者を平均観察期間4.9年(最長9.6年)追跡して調査を行いました。その結果、PCSK9抗体価3200 をカットオフ値に定め検討したところ、抗体価高値群(3200以上)の死亡リスクは低値群(3200未満)と比べodds比2.7倍上昇しました(下図)。脂質値、年齢、スタチンの有無で調整した多変量解析の結果でもPCSK9抗体価は独立した糖尿病患者の死亡リスク因子であることが明らかになりました。今後さらに症例数を集めて長期間検討する必要がありますが、PCSK9抗体価は、糖尿病患者の予後予測マーカーとして有用な可能性が示唆されました。この結果はScientific Reports誌に掲載されています。

https://www.nature.com/articles/s41598-023-32644-y