成田キャンパス

糖尿病・代謝・内分泌内科学教室

教室紹介

糖尿病性ケトアシドーシスとリン補充に関する論文がJDIにacceptされました

糖尿病性ケトアシドーシスの患者さんにインスリン治療を行うと血中リン濃度が低下することは以前から知られていましたが、これまでリンの補充療法は有用でないとされてきました。しかしながら、リンはエネルギーの受け渡しに重要なアデノシン三リン酸(ATP)やヘモグロビンと酸素への結合親和性に関わる2,3-diphosphoglycerate (2,3-DPG)の構成成分であり、軽度の低リン血症でも約30%の患者で横紋筋融解症がみられるとする報告1)もあることから、低リン血症は様々な代謝障害をもたらす可能性があります。
我々は最近、ガイドラインに準じて治療を行い血糖やカリウム、アシドーシスの改善が見られたものの、心不全を伴う心筋障害や意識障害を生じた糖尿病ケトアシドーシスの患者さんを経験しました。この症例は軽度の低リン血症を伴っており、低リン血症の他に臨床症状の悪化の原因となる要因が見当たらなかったためリンの補充療法を行ったところ、症状の劇的な改善が認められました。
患者さんより文書による同意を得て、今回この症例についてアジア糖尿病学会の学会誌である「Journal of Diabetes Investigation (Impact factor 2019 = 3.761)」に論文投稿したところ、2020年7月にacceptされました。
我々は、この成果をもとに今後も患者さんにより良い治療を提供できるよう努力する所存です。

  • 1)Bringhurst F.R., et al. Bone and mineral metabolism in health and disease. In Harrison's endocrinology 4th edn. (ed. J.L. Jameson). McGraw-Hill Education, New York 2017: 423-441.