成田キャンパス
形成外科学教室

形成外科学教室

診療概要

注力している分野

当科が特に注力している分野です(詳しくは各項をご覧ください)。

先天性疾患

口唇・口蓋裂は、小児科、耳鼻咽喉科、歯科(小児・矯正、他)、言語聴覚士と連携して治療します。先天性眼瞼下垂は太ももの筋膜を移植して治療します。小耳症は肋軟骨で健側の耳に類似したフレームを作製して移植します。その他、睫毛内反症、副耳、埋没耳、臍ヘルニア・突出症など体表の先天性疾患の手術治療を行います。

顔面骨骨折

交通事故や転倒、スポーツなどで受傷した顔の骨折(前頭骨骨折、鼻骨骨折、頬骨骨折、頬骨弓骨折、眼窩骨折など)に対して手術を行います。手術では頭髪内や口の中など、なるべく目立ちにくい部位を切開して骨折の整復を行います。

鼻骨骨折(新鮮例)


鼻骨骨折による斜鼻変形

整復用の鉗子を鼻の中に挿入し骨折部を整復します。

骨折の程度に応じて、シーネで1~2週間患部を保護します。また、鼻の中にガーゼを4日ほどつめて形を整えます。

頬骨骨折

  • ①睫毛下切開、もしくは、経結膜切開 ②眉毛外側切開 ③口腔前庭切開の3ヶ所の切開から骨折部にアプローチします。
    (骨折の状態によっては、上記の3ヶ所の内、1~2ヶ所の切開でアプローチします。)
    結膜、口腔内の切開は外から見えません。睫毛下切開、眉毛外側切開も比較的目立ちにくいです。

骨折した頬骨を整復し、プレートで固定します。
(骨折の状態によっては1~2ヶ所のみプレートで固定します。)

頬骨弓骨折

  • 口腔前庭切開もしくは側頭部の切開から骨折部にアプローチします。どちらも傷跡は目立ちません。

骨折により陥凹した頬骨弓が側頭筋を圧迫し、開口障害を生じる場合があります。

側頭部の切開から頬骨弓の裏側に整復器具を挿入し、陥凹した頬骨弓を持ち上げて整復します。(口腔前庭切開からアプローチした場合も同様です。)プレート固定は行いません。

眼窩下壁骨折

  • 睫毛のすぐ下を切開、もしくは下まぶたの結膜(下まぶたを下に引っぱった際に見える粘膜)を切開し、
    骨折部にアプローチします。
    結膜の切開は外から見えません。睫毛下の切開もほとんど目立ちません。

眼窩下壁骨折により、眼窩内にあった脂肪組織などが上顎洞に落ち込んでいます。

落ち込んだ組織を整復し、自家骨や人工骨で眼窩下壁を再建します。

陳旧性鼻骨骨折

以前の鼻骨骨折による鼻の変形(外傷性斜鼻と言われる鼻の曲がり)を、骨切りを行うことで矯正します。

鼻骨骨折(陳旧例)


以前の鼻骨骨折による斜鼻変形
時間が経過していると新鮮例のような整復は困難です。

上のような皮膚切開から鼻骨・鼻軟骨を露出します。

変形した鼻骨を切り(骨切り)、移動させて真っすぐに形を整えます。
鼻軟骨・鼻中隔軟骨の変形を伴う場合は、その形も整えます。

骨切りの程度に応じて2週間ほど鼻をシーネで保護します。
数日間は鼻の中にガーゼをつめます。

顔面皮膚腫瘍切除や切除後の再建、軟部腫瘍切除

顔面のできもの(良性皮膚腫瘍)や皮膚がん(悪性皮膚腫瘍)、黒あざ(色素性母斑)・赤あざ(血管腫、血管奇形など)の切除を行います。小さなできものの場合は単純に縫い閉じますが、切除後の欠損が大きくなった場合は、周囲の皮膚を利用して傷を閉じることもあります。整容面を保つとともに機能的損失を最小限にした再建手術を提供します。良性軟部腫瘍の切除手術も行っております。

皮膚がん切除の一例

  • ①皮膚がんは余裕をもって切除する必要があります。
    ②皮膚がん切除後に組織欠損を生じますが、単純に縫い閉じると鼻(翼)の変形をきたすので、周囲の皮膚を移動させて修復します。(局所皮弁による再建)
    ③傷の一辺は鼻唇溝(ほうれい線)に沿っており、次第に目立たなくなります。

軟部腫瘍(脂肪種など)


腫瘍の直上を切開して腫瘍を摘出します。(良性腫瘍の場合、なるべく小さな切開で行います)

腫瘍が大きい際には、ドレーンを挿入して皮膚を縫合します。ドレーンは排液量をみながら数日後に抜去します。

乳房再建

乳癌切除手術時に行う同時再建だけでなく、他院で切除後の二次再建も行います。再建方法はシリコン・インプラント、自家組織のいずれにも対応可能です。

シリコン・インプラントによる再建

  • エキスパンダーに生理食塩水を注入し皮膚を拡張させる。
  • エキスパンダーを抜去し、インプラントで乳房を再建します。

自家組織による再建

広背筋皮弁による再建

左:広背筋に背中の皮膚と脂肪を一部つけます。
右:わきの下を通して背中の皮膚と脂肪、広背筋を乳房の位置に移動させ乳房を再建します。

背中の皮膚をとった部分は縫い閉じます。
腹直筋皮弁による再建

お腹の皮膚と脂肪を腹直筋に付けた状態で乳房の位置に移動させます。

お腹の皮膚をとった部分は縫い閉じます。
穿通枝皮弁による再建

お腹の皮膚と脂肪を、血管を付けて一旦切り離します。

お腹の皮膚をとった部分は縫い閉じます。
胸の血管に吻合し、お腹の皮膚と脂肪を移植し乳房を再建します。

乳頭・乳輪の再建

乳癌切除時に乳頭・乳輪も一緒に切除された場合には、仕上げ手術として乳頭・乳輪も再建します。健側の乳頭・乳輪の大きさに余裕があれば、2分割して半分を残し、半分を移植します。健側に余裕がなければ、その方に応じた各種方法で再建します。

陥没乳頭・乳輪下膿瘍

他施設で治療後の再発例も積極的に治療します。

陥没乳頭

酒井Ⅰ法を基本に陥没乳頭の修正術を行っています。


乳管と平行に切開をすすめて乳管を保存しつつ、
乳管周囲の瘢痕性短縮性部分を剥離します。

乳頭基部の両端でZ形成を行い、
乳頭頚部を締めて再陥没を防ぎます。

形の良い乳頭とするため、一部は縫合せず、開放創のままとします。

下肢難治性潰瘍

糖尿病や外傷、静脈のうっ滞、虚血などを原因として、下肢には軟膏治療だけでは治りにくい深い傷(潰瘍)が生じます。形成外科では関連各科と連携のうえ、陰圧閉鎖療法、再生医療、皮弁形成手術などを組み合わせた治療を行います。治りにくい足の傷でも、なるべく足の切断に至らぬよう、もとどおり歩行することを目標に治療を行います。


壊死した組織や感染した組織を取り除き、創面の環境を整えます。

潰瘍の状態によっては特殊な機器を装着し、潰瘍に陰圧をかけて創傷治癒を促進させます。

潰瘍の状態が良くなったところで、太ももなどから薄い皮膚を移植します。
(厚みのある組織移植が必要な潰瘍では皮弁移植を行います。)

加齢性眼瞼下垂

加齢に伴い緩んだ"まぶた"を持ち上げる筋膜の引き締めと余剰皮膚の切除を組み合わせて治療します。

<術前>
<STEP 1>
<STEP 2>筋膜の引き締め(挙筋腱膜の前転)
<手術終了時>
<術後>

リンパ浮腫

リンパ節郭清を伴った乳癌手術後や婦人科系手術後の手足のむくみに対して、弾性スリーブやストッキングの着用のほか、病状によってはうっ滞したリンパ液を静脈系に流すため、リンパ管と細い静脈を結ぶ手術(リンパ管静脈吻合)を行います。


3cm程の切開から顕微鏡下に静脈とリンパ管を吻合します。これを数ヶ所行います。

顔面神経麻痺

眉毛下垂のつり上げなど静的再建手術から、微笑の獲得を治療目標とする動的再建手術まで幅広く行います。

  • ①額のしわ寄せができなくなり、眉毛、上まぶたが下がります。
    ②眼を閉じるのが困難になり、下まぶたが外にめくれます。
    眼が乾燥して痛みます。
    ③口角が上がらず、口の動きが悪くなります。
    笑顔が作れず、食事がこぼれます。
静的再建術

顔面の左右バランスのみを取り戻す治療は静的再建術といいます。眉毛上の皮膚を切除して眉毛をつり上げたり、外にめくれた下まぶたを持ち上げて修正したり、ほうれい線での皮膚切除や太ももの筋膜を移植して口角をつり上げたりします。

  • <術前>
    ①太ももから筋膜を移植
  • <術後>
動的再建術

顔面の左右のバランスを取るだけでなく、顔の動きを取り戻す治療を動的再建術といいます。一例として、麻痺した顔の表情筋の代わりに、背中の筋肉(広背筋や前鋸筋など)を移植して口角を上げて笑う表情が作れるようにします。

  • ①筋肉の移植
    ②血管吻合
    ③移植した筋肉を動かすための神経は、
    健康な側の顔面神経か麻痺側の咬筋神経と吻合します。

義眼床

悪性腫瘍の切除や外傷によって眼球を失った方への義眼床再建では、装着の安定性と整容面を重視しております。患部の状態に応じて、植皮、皮弁、マイクロサージャリーによる組織移植などの方法で形成します。

  • 悪性腫瘍の切除や外傷によって眼球を失った方は、眼周囲の組織も不足しています。
    この状態では義眼が装着しにくいです。
義眼床再建の一例

眼の外側の皮膚・皮下組織を180度回転させ、上まぶたの組織不足を補います。

上まぶたの組織不足が解消され、義眼を装着しやすくなります。より組織の不足が大きい際は、マイクロサージャリーによる組織移植を行います。