理学療法学科の海外系授業④
―4年次の理学療法国際実習―
今回の記事では、本学理学療法学科の海外系授業の集大成でもある④4年次の理学療法国際実習の様子を紹介します。この科目は4年生対象の選択科目という位置づけで、2023年度の9月に初開講となりました。
本学理学療法学科の4年生は,4-8月にかけて臨床実習に参加します。当然、臨床実習で必要となる知識や技術は1-3年の学内カリキュラムで全て履修済みとなっているため、9月の時点では理学療法士として一歩を踏み出す準備がほとんどできています。よって、この理学療法国際実習では、海外の理学療法についてより深く学んでいきます。
今回は「海外保健福祉事情Ⅱ」で研修先となっているシンガポール工科大学(SIT)の理学療法学科がホストとなり、SITで講義や実技演習に参加すると共に、シンガポールの高齢者施設や個人クリニックを訪問しました。シンガポールは理学療法士が免許制ではなく登録制であり、また理学療法士の開業権が認められていることが日本との制度上の大きな違いです。今回、SITで理学療法士が診断を行うための科目に参加し、その内容の多くが実際の臨床で遭遇するケースを想定したケーススタディであることが非常に印象的でした。グループワークに積極的でない学生は見られず、全員が意見を述べディスカッションを重ねながら、よりよい問題解決を図っていく姿勢に高いモチベーションを感じました。SIT理学療法学科の学生は、いわゆる新卒(高校卒業後すぐ入学)の学生だけでなく、一度社会に出てから大学に戻ったり、理学療法学科に入学するために何年も浪人したりする学生も多いと聞き、高い意思を持って理学療法士を目指していることが伝わってきました。
またシンガポールは多民族国家であり国民の多くが多言語を話すため、国内は多様性に富んでいます。それと同時に公用語が英語であるために、他国とコミュニケーションを取る際のlanguage barrierがないことが大きなメリットであることを実感しました。東京都に満たない国土の小さな国が世界で羽ばたくことのできる理由の一つであると思います。本学の学生も、英語の必要性を痛感したことと思います。
今後、科目を履修した学生と共に日本とシンガポール理学療法の類似点と相違点、長所と短所、見習うべき点などについて考察を深めていきます。履修学生も今後のキャリアを考える時に、留学や海外で働くという選択肢が増えたのではないかと期待しています。また外からしか見えない日本の良さがあることも実感しました。こうした経験から広く柔軟な視野を持った社会人となってほしいと願ってやみません。
今回、様々な方のご協力のおかげで科目を開講することができ、大変貴重な時間を過ごすことができました。この場を借りて深くお礼申し上げます。ありがとうございました。
理学療法学科 准教授
牧原 由紀子