医学部6年生がベトナムなど9か国で初の海外臨床実習に臨みました
医学部6年生の海外臨床実習が6~7月の約4週間、アジアや欧米の医療機関で行われました。6年次の1学期に原則全員参加で行う実習で、本学で初めて臨む第1期生の約130人のうち、最多の約70人が参加したベトナムでの臨床実習を中心に報告します。
実習は、ベトナム南部の商業都市・ホーチミン、かつての王宮などが点在する中部の古都・フエの6病院に分かれ、内科・外科のほか、熱帯病科、小児科、産婦人科などから希望する診療科を選んで行われました。
ホーチミン市の国立チョーライ病院は、病床数が約1900、手術件数は年間約4万件の巨大病院。ここには本学の関連施設・ドック健診センター(HECI)が設置され、遠隔病理診断システムを用いて病理検体の二次診断を日本から支援するなど、医療水準の向上をめざした交流が続いています。今回は見学実習が行われました。
ベトナムは出生率が高く、平均年齢も約30歳と若い、将来の可能性を秘めた国です。少子化の日本とは対照的に、産科や小児科の医師数や症例数も多く、実習先の一つであるホーチミン市の国立フンブン病院は、年間の分娩数が約3万5千~4万件に上ります。このほか、ホーチミン市医科薬科大学医療センター、フエ医科薬科大学病院も実習先となりました。
現地での実習に参加した6年生は、各診療科で多くの症例に触れながら、現地の指導医や医学生と議論を重ねて理解を深めたり、日本と異なる医療事情や文化・慣習に戸惑いつつも、海外で医師として働くことへのイメージを膨らませたりするなど、新たな発見や刺激の多い濃密な4週間を過ごしました。
ベトナム以外では、アメリカ、ドイツ、イギリスなどの病院を実習先に選ぶ学生も10人ほどいました。アジア6か国の政府や提携校から推薦されてきた留学生は、母国のモンゴルやインドネシア、カンボジア、ミャンマーなどで研修を行いました。また、コロナ禍という特別な事情に鑑み、今回は50人ほどが成田キャンパスに残り、「バーチャル海外実習」に取り組みました。
バーチャルの実習とは言え、ベトナムから6症例、カンボジア、インドネシア、モンゴル、ミャンマーから各1症例の計10症例を用いたケース・スタディは、英語で問診をして治療へのアプローチを考えたり、現地の指導教員と意見を交わしたりするなど、臨場感あふれる内容でした。学生たちは、病気の背景にそれぞれの国の生活や文化的な背景があることも学びました。
医学教育統括センター長の赤津晴子教授が「症例ごとに教育のポイントを明確にしました」と話すように、蚊を媒介とする病気への最新テクノロジーを駆使した新しい解決方法や、世界のホームレス問題、途上国で多発する交通事故など、テーマは多岐にわたりました。
アンケートで実習の感想を尋ねたところ、海外組は90%以上が実習中に多くの学びがあったとし、95%が今回の実習に満足していると回答しました。バーチャル組も、実際に海外で実習をしているように感じたと答えた学生が85%を超えました。症例の選定から問診、鑑別診断、現地医師の講義、学生同士のディスカッションなど、よく練られたプログラムの質の高さが高評価につながりました。