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先天性甲状腺機能低下症の新規原因遺伝子機能を解明~水野晴夫・医学部教授による杏林大と名古屋市立大との共同研究発表

2019.08.21 生まれつき何らかの理由でヨウ素から甲状腺ホルモンをつくる能力が低下している先天性甲状腺機能低下症について、杏林大学の菅間博教授(病理学)、国際医療福祉大学の水野晴夫教授(小児科学)、名古屋市立大学の齋藤伸治教授(同)らは、獨協医科大学、生理学研究所との共同研究で、SLC26A7と呼ばれる遺伝子が新たな原因遺伝子であることを発見したと8月20日、記者発表しました。この研究成果は、世界で特に権威がある学術雑誌の1つである『Nature』を出版するNature Researchが提供しているオープンアクセス・ジャーナル『Communications Biology』で7月24日から公開されています。
同症は治療が遅れると成長障害や知的障害のリスクがある病気で、原因遺伝子は複数報告されているものの、全体の30%程度しか特定されていませんでした。SLC26A7遺伝子の役割もこれまでわかっていませんでした。
甲状腺ホルモンを合成するのに必要不可欠な元素であるヨウ素は、食事から摂取して、そのほとんどが甲状腺に貯蔵されます。甲状腺にヨウ素を取り込む輸送分子(ヨードトランスポーター)として血管内に存在し、血液から細胞にヨウ素を取り込むSLC5A5や、管腔側に存在し細胞に取り込んだヨウ素を、甲状腺ホルモンを合成する領域の濾胞に運ぶSLC26A4が知られていましたが、この研究で、これとは別にSLC26A7にも管腔側で甲状腺濾胞内へヨウ素を輸送する役割があることが明らかになりました。この成果をきっかけに今後、ヨウ素を甲状腺濾胞内へ輸送、貯蔵するメカニズムが解明されれば、この病気の治療に応用されることが期待されます。

先天性甲状腺機能低下症の新規原因遺伝子 SLC26A7 の機能を解明