東京オリンピックにボランティアとして参加して 医学部5年生のタイさん
本学医学部5年生のNguyen Van Tai(グエン・ヴァン・タイ)さんが、東京オリンピックにボランティアとして参加されました。
ボランティア活動を通じて感じられたことについて、寄稿してもらいました。
オリンピックを初めて見たのは小学生の時で、2008年の北京オリンピックでした。これまでに見たことがない大規模なイベントに圧倒され、とても感動したことを覚えています。いつか生で見てその場の雰囲気を味わいたいと長い間、願っていました。
日本に留学してから、日本と多くの国の学生と知り合い、国際的な活動に興味を持つようになりました。国際医学生団体に入り、多くの国際的なイベントに参加しました。どのイベントもとても楽しく、そこで得られた友情はかけがえのないものでした。
オリンピックという世界最大なイベントに参加できたら、子供のころの夢が叶うだけでなく、きっと貴重な経験ができ、かけがえのない出会いがあると思いました。東京でオリンピックが開催され、この二度とない機会を絶対に逃さないとの気持ちでボランティアに応募しました。
開会式と閉会式のアシスタントキャストをしました。各国からの選手団が入場するとき(Parades of Athletes)、道を作り、選手たちを誘導し、日本の「おもてなし」の心で歓迎しました。途中で、皆で簡単なダンスをすることもありました。
コロナ禍でのこのような大規模なイベントの開催は批判もありました。この状況で何が一番良いのかは自分にはわかりません。その正解は誰もわからないと思います。
ただ、当事者としてオリンピックに参加して、大会を無事に開催させることがどれだけ大変だったかがよくわかりました。大会が無事開催できたのは組織委員会をはじめスタッフ、医療従事者、ボランティアの方々、本当にたくさんの人が尽力したからこそです。オリンピックにかかわる一人ひとりの大会への思いは熱く、素晴らしい大会となるよう願いを込めて一生懸命活動していた姿を見て、私も元気をもらいました。
この困難な状況において、開会式で同じ目的を持つ世界各地のアスリートたちが一つ屋根の下に集まることは奇跡のように思えました。その歴史的な瞬間に立ち会って、それは私たちが希求する団結と平和そのものであり、またそれは自分が望む国際活動の理想の姿だと強く感じました。John Lennonの名曲「imagine」が会場にながれたとき、その場の205カ国からの人々が一つになったようで、とても感動して涙がこぼれそうになりました。本大会がきっと日本、そして世界の人々に希望を与え、この困難な状況から立ち上がる力になると信じています。
今回のボランティアで多くの出会いがありました。自分とは全く違うバックグラウンド、職業、生活の人々がオリンピックへの思いという共通点で集まり、素晴らしい大会を作り上げるために一緒に活動してきました。それらの経験はとても面白く、そしてまたとない貴重な経験でした。一番記憶に残っているのはセレモニーのリハーサルの時に、他のボランティアの方が「ベトナム選手団が入場するときは無理にでもタイくんを前に押してあげる」と言ってくれたことです。自分が今、外国にいることも忘れ、とても温かい気持ちになりました。この経験は恐らく一生記憶に残ると思います。
今回、ボランティアに参加できて、大変光栄に思うと同時に、微力ながら二つ目の故郷である日本のために何かできたと実感し、大変幸せです。このボランティアを通じて得られた経験、感情、出会い、思い出は私の一生の宝ものです。そして、今後、自分の更なる旅の種となると信じています。