成田キャンパス
免疫学教室

免疫学教室

教室紹介

 国際医療福祉大学医学部 免疫学教室では、ヒト疾患に関わる免疫病態の解明とその制御を大きな目的として研究を進めています。免疫システムは、生体防御機構の一つとして、感染症やがんに対する防御として働きますが、常に免疫からの逃避が起こります。これらの機序解明による防御機構の増強と逃避機構の克服が我々のテーマとなります。特に、免疫学教室では、「がんに対する免疫」について研究を進めています。

 また、免疫システムは単なる防御機構ではなく、神経系や内分泌系(ホルモン)と連動して、体全体の調節を担っており、体の恒常性維持(ホメオスタシス)のために重要です。精神的ストレスを受けるとホルモン産生を介して免疫が抑制されるのは有名な一例です。免疫システムは、自然免疫系、獲得免疫系の免疫細胞や分子がネットワークを構成して働きますが、さまざまな原因により破綻を来すと、多様な免疫疾患(自己免疫疾患、アレルギー、免疫不全など)が起こります。また、動脈硬化やメタボリック症候群などの生活習慣病、認知症、外傷、生殖、老化など、一見免疫とは関係ないと思われる疾患や生命現象にも、免疫が大きく関わっています。

免疫研究では、患者さんから提供していただいた貴重な臨床検体や、遺伝子操作をしたマウスモデルなどを使って進めることが多いのですが、ヒトとマウスの免疫システムは異なる部分もあり、その点を十分に考慮した研究が重要です。近年、マルチオミックス解析などの科学技術の発展により、少量の臨床検体を用いた研究でも重要な科学的発見が可能になりました。免疫学教室では、免疫学の全体像を十分に考慮し、広い視野をもって「分子レベルでのがん免疫研究」に取り組んでいます。

 さて、私たちの現在の研究は、ヒトのがん免疫病態の解明とその制御です。研究の成果は、これから高齢化に伴い2人に1人が発症すると言われる「がん」の診断法や治療法(特に免疫療法)の開発に直結しています。がんは遺伝子の変異により、細胞が異常増殖を起こして体を破壊します。一方、免疫は免疫監視機構としてがんを排除しますが、がん細胞は免疫逃避機構を利用して、免疫から逃れて増殖します。

 がんに対する免疫応答には個人差が大きく、次の要因によって規定されます:1) がん細胞の遺伝子異常(突然変異による異物化は免疫防御を作動させる一方、がん遺伝子などの異常は免疫を抑制する)、2) 患者さんの免疫体質(HLAタイプなど遺伝子多型や性差)、3) 環境因子や生活習慣(腸内細菌叢、食事、ストレス、喫煙、紫外線、併用薬など)。これらの要因はがんの進展・予後、および免疫療法だけでなく、他のがん治療に対する反応性にも影響します。

 免疫学教室では、ヒトの多様ながん免疫病態とその制御を目指して、「抗腫瘍免疫応答」と「免疫抑制・抵抗性」の機序の解明を中心に、マルチオミックス解析、シングルセル解析、ゲノム編集、オルガノイド培養等の最新のテクノロジーを駆使して、臨床検体(血液やがん)とマウスモデル(遺伝子改変、免疫系ヒト化マウス等)を用いて研究を進めています。また、基礎研究成果の臨床応用に向けて、企業との産学連携体制による新しい診断法や治療法の開発も積極的に行っています。

 このような、免疫・がんの基礎研究、トランスレーショナル研究に興味をもつ若手の研究参加を心から期待しています。日本の将来のためには、「研究」は本当に重要です。