成田キャンパス
分子生物学教室

分子生物学教室

研究概要

糖尿病など代謝内分泌疾患の分子メカニズム解明
Elucidation of molecular mechanism underlying endocrine and metabolic
disease including diabetes

 代謝内分泌領域の代表的な疾患である糖尿病の罹患者は、2021年時点で5億3700万人と推定され、今後も増え続けると推測されています。糖尿病は、血液中のグルコース濃度、つまり血糖値の上昇により発症します。膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞は、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌により、糖代謝を制御しています。糖尿病では1型・2型いずれにおいても、膵β細胞の機能ならびに量の障害により、インスリン分泌が低下し、糖代謝異常が発生します。このようにインスリンは重要なホルモンであるため、多くの研究者の興味の対象となっており、インスリンに関する複数の研究がノーベル賞につながっています。
 私たちはこれまで、この膵β細胞のインスリン発現に重要な転写因子の機能を解析してきました。その結果、これら転写因子は膵β細胞におけるインスリンの発現だけでなく、胎児期や新生児期における膵内分泌細胞の分化過程や、糖尿病における膵β細胞障害のメカニズムに重要であることを明らかにしてきました。
 少子高齢化社会における生活習慣病に対しては、臨床症状などの異常が現れる前に病態を把握し、発症前に介入する先制医療が重要と考えられます。糖尿病に関しては、前糖尿病状態の早期診断や、早期治療法の確立が大切です。そこで私たちは、糖尿病の直接の原因である、インスリンを分泌する膵β細胞の障害の分子メカニズムについて明らかにするとともに、その研究成果を、膵β細胞障害早期を反映するバイオマーカーの同定や、糖尿病に対する先制医療の開発に応用すべく、研究を進めています。