成田キャンパス
生理学教室

生理学教室

研究概要

非侵襲的ヒト脳機能計測

Non-invasive Human Neuroimaging

主幹研究員:岡本 秀彦
空気の振動にしかすぎない音波をヒトが意味のある「音」として認識するためには、中枢神経において様々な神経処理が必要です。ヒトは空気の振動を、意味のある「言語」として捉え論理的思考や意思伝達に利用することもあれば、心躍らせる「音楽」へと昇華させ感情を揺さぶることもできます。音波によってヒト脳内に惹起された何かが、「言語」や「音楽」を生み出していることは間違いないのですが、そのメカニズムは未だ謎に包まれています。私達は、脳波や脳磁図といった体に害を与えない計測方法で、身体への様々な外的刺激(特に音刺激)が、脳活動にどのような影響を与えるかを調べています。また、脳活動は年齢や生活環境、病気等によって動的に変化する事が知られています。疾病によって脳活動がどのように変化するかを明らかにすることで、新しい検査方法の開発や、脳活動を健康な状態へと導く新しい治療方法の開発に繋げることができます。私達は非侵襲的ヒト脳機能計測で新しい知見を得て、それを応用していくことで社会に役立てていきたいと考えています。

●詳細はResearchmapでご覧ください。

電磁気生理学的手法を用いた非侵襲的脳機能解析

Analysis of human brain function using non-invasive electromagnetic approach

主幹研究員:後藤 純信
現在まで、①疾患モデルを用いた病態メカニズムの解明、②感覚運動情報処理機構の解明、③高次脳機能障害の病態解明と効果的なリハビリテーション開発(半側空間無視を中心に)を研究の柱に、ヒトや動物を用いて電磁気生理学的手法や機能画像を駆使した研究を行ってきました。近年は、③に重点を置いて研究を行っています。 神経情報が、末梢からの入力系(感覚系)、脳内での高次認知機能、末梢への出力系(運動系)で並列的に処理されるとの考えで、特に視覚情報処理の入力系と認知機能システムについて電磁気生理学的手法を用いて実験系を組み、最近開発した立体視刺激と安静時機能的MRIを用いた半側空間無視のメカニズム解明を行い、類似した症状でも障害部位によって異なるネットワーク障害が起こっている可能性を示唆する成果を得ています。
 また運動系については、経頭蓋磁気刺激法を用いて、運動誘発電位(MEP)に随意筋収縮が及ぼす影響を検討し、前腕筋と手根筋、橈側筋と尺側筋で生理学的特性が異なることや機能的MRIで運動機能に関する脳内機能連関図の作成にも関与しています。
 このような研究成果を踏まえ、今後、新しい電磁気生理学的検査法の開発、感覚情報の脳内自動処理、視空間認知情報の脳内情報処理について更なる研究を行い、自閉症やアルツハイマー病などの臨床疾患のメカニズム解明や効率のよいリハビリテーションの提言をめざし、社会貢献したいと考えています。

●詳細はResearchmapでご覧ください。

代謝・寿命調節におけるインスリンシグナル経路の役割の検討

主幹研究員:中江 淳
糖尿病・肥満は、現在、人類が抱える最大の栄養病態です。そのため、その病態生理を明らかにしていくことは、その予防・治療対策を考える上で重要です。私たちは、その中心ホルモンであるインスリンの作用を中心に研究してきました。インスリンは、インスリン受容体に結合したのちに、細胞内のインスリンシグナル経路を経て、様々な生物学的作用を発揮します。そのうちの一つにフォークヘッド転写因子FOXOがあり、インスリンはFOXOを抑制しています。FOXOは、体内のいたるところに発現し、糖・エネルギー代謝に抑制的に作用し、FOXOの活性化は、糖・エネルギー代謝の悪化、肥満につながります。したがって、FOXOの抑制は、ある意味、糖尿病・肥満の治療に利用しうると言えます。一方、下等な動物、たとえば、線虫・ショウジョウバエでは、FOXOの仲間の転写因子は、寿命を延長することが明らかになっており、長寿遺伝子としての一面を持っています。寿命の調節は、生物学の中で、未だ科学的にメカニズムが明らかになってはいません。私たちは、これまで、いくつかのFOXOの活性を調節するタンパクを同定してきました。そのうちの一つに、Foxo1 CoRepressor (FCoR)があります。すでに、FCoRのノックアウトマウス (FcorKO)が、糖尿病になりやすいことを明らかにしました。今後、FcorKOの寿命を検討することにより、寿命調節におけるFCoR-FOXO経路の生理学的役割を解明していきたいと思います。