花崎 元彦 教授からメッセージ

「麻酔」という言葉に対して皆さんはどのような知識、印象を持つでしょうか?かくいう私も医学生の頃は「手術中に寝ること?」くらいの認識しかなく、関心も薄かったように思います。しかし臨床実習で麻酔科学の奥深さを知り、10日間の実習を終える頃には将来の進路として決めていました。

麻酔は「手術を安全に遂行する」ことを第一義に行われますが、鎮痛・鎮静・不動化という状態を作り出し、それを維持するということが、呼吸・循環という生命の根幹に関わる部分をきめ細やかに管理することに直結することを知ったからです。そしてその延長線上に集中治療は存在し、より長いスパンでの思考、広い領域の知識を必要とします。
医学部で学ぶあらゆる学問を統合して考え、医療として実践するのが麻酔・集中治療医学である、と気づいたときの驚きは今でもはっきり覚えています。

医師となり臨床での知識、スキルを高めるなかでは様々な疑問や困難にぶつかります。喘息など気道過敏性亢進状態で麻酔を行うリスク、さらには肺移植術のような究極の呼吸管理では虚血・再潅流による急性肺傷害という難題を経験してきました。留学したメイヨークリニックではこのように臨床で直面する問題を直接のテーマとして基礎医学研究を行い、得られた知見を臨床にフィードバックすることの重要性を学び、帰国後も継続してきました。

振り返れば、医学生の時に学問としての奥深さに気づいたこと、さらに医師になり臨床で精進しながらそこで直面する様々な問題を研究で解明することの重要性を知ったこと、その傍らにはいつも熱心に導いて下さった先生や上司の存在がありました。
今は私がその役目を果たすべく、医学生や研修医の皆さんに麻酔・集中治療医学の魅力や重要性を存分に伝えていきたいと考えています。

医学生や研修医に勧めたい本や映画

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