馬場 靖子 教授からメッセージ

私が麻酔科に興味をもったのは。。。学生時代は、産婦人科医になりたいと思っていました。麻酔科は授業では物理学や化学のようなお話が多くて、難しいと思いましたし、正直自分が生涯続ける仕事という認識はありませんでした。初期研修で産婦人科の次に麻酔科を回ったときに、魅力に驚きました。患者さんのバイタルが、自分の投薬や呼吸器の操作により逐一変化し、すぐに結果が見て取れるのが楽しくてしかたありませんでした。麻酔科の臨床は患者さんの体を通して、生理学や薬理学、薬物動態学を実践する学問です。研修してみて初めてその面白さを実感できると思います。

私の業績、論文には動物実験の基礎研究が多いです。30歳台になったころ、大学院で学んだころの論文です。麻酔科専門医を取得したこと、またプライベートでも、出産して子育てと仕事、両方充実させることを考えたときに、時間がある程度自由に使える大学院進学を考えました。多くの海外の論文に触れたり、共同研究者と大いに議論し、今自分の実験の中で起きている現象について、本気で取り組みました。仮説を説明できるような追実験の結果がでたりすると、この事実を知っているのは、世界中で自分だけかもしれない。。。などとうれしく感じることもありました。海外の学会で緊張して発表する機会も何度かありましたし、今思い出しても、充実した時間だったと思います。

大学院を卒業後は、臨床に戻りましたが、同期の臨床畑でばりばりやってきた医師と比較すると、自分の臨床医としての実力はさびしく感じることもありました。でも目の前の患者さんに安全に、手術を受けてもらえるように、周りの医師たちの助けをかりながら仕事を続けてきました。手術室の医師という立場で、手術室全体の業務がうまくまわるようにコーデイネートする立場の仕事をする機会もあり、医師だけでなく、いろいろな業種のスタッフと仕事をしました。若いころは、女性は医師を続けるにあたり、男性より不利な点が多いとおもうことがありましたが、手術室の仕事は、男女わけへだてなくできる仕事だと感じました。医師の仕事は一生続き、一生学ぶ仕事ですので、どんな場面でもあきらめることなく、最善と思う処し方で過ごしていれば道が開けると思います。若い皆さんは、可能性がたくさんありますので、ぜひあきらめずに若いころの高い志しを持ち続けて、がんばってください。