成田キャンパス
麻酔・集中治療医学教室

麻酔・集中治療医学教室

教室紹介

ごあいさつ

国際医療福祉大学医学部 麻酔・集中治療医学教室
教授(代表) 倉橋 清泰

取得資格:麻酔科標榜医、麻酔指導医、日本集中治療医学会専門医

みなさん、こんにちは。麻酔・集中治療医学講座 教授(代表)の倉橋です。 まず簡単に私のbackgroundをお話ししましょう。私は1989年に横浜市立大学医学部を卒業し、2年間の研修の後、横浜市立大学の麻酔科に入局しました。
今の学生さんや若い先生方には違和感がないかもしれませんが、私と同世代の人は「おや?」と思うでしょう。と言うのも現在の臨床研修制度が施行されたのは2004年で、それ以前は卒業と同時にどこかの医局に入るのが常だったからです。横浜市大は珍しく、卒後2年間どこの医局にも属さずに最低4つの科をローテーションするプログラムを行なっていました。正直に申し上げると私はこの制度がなかったら外科医になっていたはずなのです。それが何故、麻酔科に入ろうと思ったかですって? それについては、のちほどお話ししましょう。

研究

入局して数カ月が経った頃、先輩に誘われ臨床業務の傍ら研究室(ラボ)に行って動物実験のお手伝いをすることになりました。そして数年後その先生の計らいで米国の麻酔科のラボに研究留学する機会を得ました。行っていたのはUniversity of California at San Francisco、Miller's Anesthesiaのミラー先生が主任教授だった麻酔科です。ラボの指導者(PI)はWiener-Kronish教授。今ではハーバード大学の主任教授です。
帰国後は母校に戻り、自ら基礎研究のラボを立ち上げ様々な研究をしてきました。領域としては呼吸器:急性呼吸急迫症候群(ARDS)や人工呼吸器誘発肺障害(VILI)の発症機序の解明と治療がメインテーマです。
実はSan Franciscoから帰国後ずっと、留学中に共同研究者として知り合ったUniversity of Washington呼吸器科のThomas Martin教授の元で研究をし、自分のPIとしてのレベルを上げたいと思っていたのですが、2006年に横浜市大でsabbatical制度が始まり、それに選ばれたことでこれが実現しました。これらの留学を通じて、基礎研究の幅広い領域:細胞や動物を使った実験に、histology、pathology、physiology、molecular biology等々の技術/知識を使った解析まで、一通りやってきました。何人もの大学院生、研究生を指導しましたが、今では皆第一線で活躍されています。
2012年にARDSが定義し直された(Berlin definition)のは皆さんもご存知かと思います。これを受けてヨーロッパ集中治療医学会の急性呼吸不全部門が、ARDSに関する世界規模の観察研究(LUNG SAFE study)を立ち上げたのですが、縁あってそのnational coordinatorを依頼されました。日本からのstudy参加を呼びかけ、国内28施設のデータ収集などのお手伝いをしたのですが、その経験から基礎研究に留まらず、臨床研究、観察研究、疫学調査など幅広く研究する必要性を感じ、現在前任地の仲間との共同研究をはじめ、幾つかの研究を並行して行なっています。
ところで、「大学院に進んだ方が良いのか」「専門医取得と大学院どちらを先に進んだほうが良いのか」「何のために研究するのか」「学位を取ると何か良いことがあるのか」などなど、若手の先生から良く質問されます。冒険家に「なぜ山に登るのか」と聞くと「そこに山があるからだ」と答えるという話があります。scienceの世界で、なぜ研究をするのかと言われれば、私は「今、目の前にいる患者を救うために何をするのが一番か、その答えがないから研究をする」と答えます。
昨今、論文の「盗用」「改竄」「捏造」などの事件が巷を賑わせています。なぜこの様な事が起こるのでしょうか。それはscienceの本来の目的を失っているからではないでしょうか。論文をpublishすることや、博士号を取ることもちろん価値のあることです。しかしながら研究の究極の目的は真理を追求することなのです。
国際医療福祉大学は2018年4月に大学院も開設しました。ハードソフト両面で研究の環境は整ってきています。大学院入学、研究生、臨床をしながらの研究、いずれも歓迎です。

教育

ご存知の通り本学医学部は2017年4月に82番目の医学部/医科大学として誕生しました。その教育方針はユニークで、active learningを主体とする教育手法を用い、1〜2年生では英語のみで授業を行い、世界で活躍する医師を育てるというものです。医学教育統括センターには40人の専任教員を配置、兼任のコースダイレクターも加えて、各教科の準備から実施・フィードバックまで、教員および学生のサポートをする体制が確立しています。私もコースダイレクターとして、より良い医学教育のために2・3年生の授業のサポートと実施のアドバイスをしています。
本学に集う学生はこの様な教育理念や体制に共感し受験してきた日本の精鋭120人と、海外からの優秀な留学生20人。彼らが切磋琢磨、刺激し合いながら机を並べて学んでいます。10数年教員をしてきましたが、ここに来て初めて「授業をするのが楽しい」と思う事が出来ました。我々教員は教えるのではなく、彼ら学生が自ら学ぶのを導くだけなのです。あなたも本学の熱い学生達と接してみませんか?

臨床

本学は関東地区に附属病院5つ、九州地区にもグループ病院として高木病院や福岡山王病院などを抱えます。それぞれ特徴のある臨床を行っていますが、麻酔科の専門医に絡めてお話しすれば、専門医申請の規定にある全ての症例をグループ内で完結する事ができます。
さて、最初にお約束した「なぜ麻酔科医になったか」をお話ししましょう。外科系をローテーションしていた際に、ICUに入っている重症患者を受け持つことも多くありました。外科系と言ってもそれぞれ、「全身管理」を学びたいという思いで選んだ科だったのですが、私の疑問に的確に答えてそれを教えてくれたのはICUを管理していた麻酔科の先生たちでした。そして最後に麻酔科をローテーションした際にも、「全身をみられなければ麻酔をかけることはできない」という事を知り、「これぞ自分のやりたかった事だ」と最後のどんでん返しで麻酔科に入局を決めたという次第です。学生時代には思ってもいなかったことです。
先に関東地区に5附属病院と申し上げましたが、これらに加え2020年には成田に6つ目の附属病院が開院します。既に建築が始まっていますが、そこの手術室、ICUとHCUの設計を任されたので目の前に最新の設計図があります。こっそり中を覗いて見ましょうか。手術室は20室、PACUはもちろんのこと麻酔導入室もあります。術前外来のブース(歯科や薬剤師用も含めて5ブース)もエリア内に配備しました。ICUとHCUは各16ベッド。ICUは全個室化し、患者家族を24時間いつでも受け入れられる器を用意しています。早期離床やリハビリも含めABCDEバンドルにFも重要であることは説明の必要もないでしょう。
現在、残り一つだけピースが抜けています。それはやる気に満ちたあなたです。私たちと一緒に壮大な絵を描きませんか。