医学・医療・福祉系の大学・大学院における主たる活動は、臨床、教育、研究の三つに要約できます。 1995年に開学した国際医療福祉大学、99年開設の同大学院ではこの三本柱をバランスよく発展させてきました。 東京都、栃木、千葉、神奈川、福岡各県に展開する約40のグループ関連施設で世界トップクラスの医療福祉を提供し続けるとともに、 アジアを中心とした医療福祉のグローバル展開にも積極的に取り組んでいます。
23年前の開学以来、日本初の医療福祉の総合大学だからこそ可能な「関連職種連携教育」を推進し、 昨年開設の医学部では、30名近い教育担当専任教員からなる「医学教育統括センター」主導のこれまで他に類をみない医学教育がスタートしました。
また研究志向の強いスタッフを数多く擁しているのも本学の特長のひとつに挙げられます。 日本では現在82の大学(校)で医師が養成されていますが、最後に加わった本学における文部科学省などの公的研究費の獲得額は、 すでに82大学のほぼ中位に位置しています。そして、医学・医療・福祉研究の更なる進展を図るため、2018年4月1日未来研究支援センター(現 研究支援センター)が設立され、初代センター長として着任いたしました。
私は東京大学医学部医学科を卒業後、同大学第三内科(循環器内科)に籍を置いて臨床、教育、研究を行ってまいりました。 とくに、同大学薬剤疫学講座、クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット、臨床疫学システム講座、 検診部、臨床研究支援センターの講座責任者(教授)を約16年間務め、循環器分子生物学、臨床疫学、ゲノム疫学を中心とする自らの研究を展開させつつ 、臨床研究支援センターでは、約90名の医療スタッフとともに、東京大学内外で行われている約300の医師主導および企業主導治験、 研究者主導臨床研究をサポートしてきました。東京大学医学部附属病院が医療法に基づく臨床研究中核病院、 がんゲノム医療中核拠点病院の指定を受けたことをひとつの区切りとして、東京大学を早期退職し、 このたび国際医療福祉大学に奉職することといたしました。
私は国際医療福祉大学開学当初から評議員としてその発展を見守ってきましたが、臨床・教育と比べると、 研究面では個々のスタッフの個人的能力に依存する発展が中心だったようにも感じています。 医学部誕生をひとつの好機と捉え、医学・医療・福祉研究の更なる充実を大学組織として強力にバックアップしていきたいと思っています。
ここ10数年、日本人のノーベル賞受賞が続いてはいるものの、一方で将来の日本の研究レベルの低下を心配する声もよく聞かれます。 近い将来、国際医療福祉大学からノーベル賞級の研究成果が得られることを密かな目標に掲げ、縁の下の力持ちとして活動してまいります。