松本 哲哉 教授からメッセージ

国際臨床感染症センターにおける研究と実績

2020年に世界に広がった新型コロナウイルスはまだ終息する見込みが立たず、世界を大きな混乱に陥れています。2021年は国内でも東京オリンピック・パラリンピックなど大規模なイベントが予定されていますが、感染症への対応なしに安全に開催することは困難です。さらに、インバウンドによって海外から持ち込まれる各種病原体のリスクも増大しています。本学医学部および附属病院は成田に位置し、海外から日本に入り込む感染症の水際対策の重要な役割を担っています。
2020年3月に国際医療福祉大学成田病院が開院してから、新型コロナウイルス感染症患者さんへの対応が喫緊の課題となり、発熱外来や入院患者さんへの対応を実施してきましたが、研究面においては、感染症患者さんの病態解析、新規検査法の評価や有効な治療薬の開発、感染対策における新規消毒法の導入などさまざまな角度から対応を進めています。
また、世界的には耐性菌の問題も深刻になってきているため、アジア各国の医療機関との連携を進め、すでにバングラデシュとの共同研究では、日本では稀にしか分離されない高度な多剤耐性菌を用いて疫学的、微生物学的な検討を行っています。

研究専門分野の教育者として

新型コロナウイルスの流行によって、私たちの生活のあり方も大きく変わってきました。第1波の頃は緊急事態宣言も出され、一斉休校が呼びかけられたため、大学での教育もリモートでの受講が主となりました。これにより、教育のあり方を日々議論しながら、試行錯誤で取り組んできたのが実状です。リモートでの授業が持つメリットも認識されましたが、その一方で対面の授業だからこそ伝わる内容もあることが実感されています。幸い、このウイルスに関する知見も多く得ることができたため、感染対策面に配慮しながら工夫を行い、本学でも対面での授業が中心となっています。おそらく医学生の皆さんも大きな変化に戸惑いながら授業を受けてきたのではないかと思いますが、医師をめざす熱意を忘れず学んでいただきたいと思います。

医師をめざす受験生のみなさんへ

医療は患者さんのためにあるわけですが、実際の社会では医療費の増大や医師を始めとする医療従事者の不足などいろいろな問題があり、我慢を強いられている患者さんも少なくありません。また、医療を提供する側も多くの困難を抱えながら日々の業務に携わっています。海外と比べて日本の医療は優れていると実感しますが、それを支えているのは医療従事者の献身的な貢献だと思います。さまざまな困難を抱えながらも、患者さんのことを大切に考えられる人にこそ医師になってほしいですし、その覚悟を持って挑んでもらいたいと思います。

【Profile】
長崎県立長崎南高等学校、長崎大学医学部(1987年卒)、医学博士。
前東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長。米国ハーバード大学Channing研究所研究員、東邦大学医学部微生物学講座講師、東京医科大学微生物学分野主任教授、東京医科大学病院感染制御部部長(兼任)を歴任。2018年から現職。感染症専門医・指導医、臨床検査専門医。