誰しも今学んでいることが後々どう役に立つのかが見えないと、意欲が湧きにくいものです。 従来の医学部のカリキュラムではまず低学年で基礎医学を学び、上級生になってから臨床医学を学びます。 私が医学生の頃は、3年次から解剖学、生理学などが始まり、心音について学んだのが4年次でした。 当時は、心雑音の名前と弁膜症の名前を対応させて覚えるのが大変で、実際に聴診器を手にして生の心音を聴いたのは5年次からであったと記憶しています。 振り返ると、生理学で心臓の特性について学んでも、それが患者さんの息切れとどう結びつくのか見当もつかず、 一方で心音を聞く頃には、生理学で学んだことをすっかり忘れており、とてももったいなかったと思います。
本学で実践している器官別統合講義は1年次の3学期から始まる基礎と臨床の一体型講義です。 4週間ごとに循環器系、呼吸器系、消化器系というように各器官別に集中講義を行っています。
循環器系では解剖学、生理学、薬理学、病理学、放射線科、循環器内科、心臓外科、血管外科の教員がお互いに密に連絡をとりながら講義を行っています。 お互いの講義の教材や資料を共有し、内容について吟味しながら準備を行います。 こうすることで、それぞれの授業が有機的に結びつき、今学んでいることが患者の治療にどのようにつながるのかがよりよく理解されるはずです。
大切なことは学生に「これ面白いね」「これ不思議だね」と興味を持ってもらうことです。 教師からの一方的な情報伝達や、「やらされ感」に満ちた授業ではなく、学生が自ら能動的に学ぶきっかけとなるような授業が望まれます。 私自身、医学生時代には体験してこなかった、ある意味異次元の授業を行っているため試行錯誤はありますが、 学生の瞳の輝きに応えなくてはと思うと大いに意欲も湧きます。学生の心に火をつける授業を心がけています。